コンセプト

 私の作品はいくつかの対比をベースにしています。フランスと日本、古典とモダン、伝統的モチーフと現代的な感覚、一般的に基本となる素材とごく個人的な物語を持つ素材の組み合わせ。多くの対比する要素を調和させ、タペストリーに織り込んでいます。

 かつてタペストリーが最もそのアイデンティティを発揮した中世の作品群は、その中に物語を宿していました。そこに遠近感はなく空間は華のモチーフで埋め尽くされ、印象的な題名とともに物語の1シーンが切り取られています。

 フランスのタペストリーの代名詞、15世紀の傑作「貴婦人と一角獣」の世界に、日本人なら誰もが知る日本最古の漫画「鳥獣人物戯画」の有名キャラクターが飛び込んで、セルフィーを撮ったりワインを飲んだり。これは日本人としてフランスのタペストリーの世界で生きる私なりの新古典主義、新たなジャポニズムの表現です。

「貴婦人と一角獣( La Dame à la licorne )」 視覚 (La Vue) 1484年~1538年 クリュニー中世美術館所蔵
「鳥獣人物戯画」 12~13世紀 国宝・重要文化財

 タイトルには私の間違いだらけのフランス語をそのまま使っています。それは時々日本語なまりのアクセントだったり、文法的にめちゃくちゃだったり。けれどそれがきっかけでちょっとした笑いが生まれたり。なので間違いはそのままに、カッコ内で正しいフランス語を添えてまるっとタイトルにしています。

 このミニ・タペストリーのシリーズのアイディアは数限りなく見つかります。これは私と周囲の誰か達との物語。そしてあらゆる異文化の中で生きるあなたの物語です。

 日本の兎には和紙が織り込まれています。これは佐賀錦の経糸で、漆や金銀の箔を貼った和紙を細く裁断したもので、私の織物のルーツであり、祖母から引き継いだ大切な私の歴史の一部です。

 そしてスマホには現代の化学繊維、レーヨンを織り込んでいます。

またワイングラスには佐賀錦の絹を使用しています

作品紹介